2012年03月04日

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

 911から何年を経たのか、ようやくにアメリカという国がこういうストーリーを作れるほどに、あの事件に対する「感情」が熟成されて、単なる敵意とか恐怖とか悲哀とかから離脱をはかれたのだろうか……うーん、離脱という表現は間違っている、何て表せばいいんだろう、主人公のパパの棺には空気がつまっているだけで、オスカー少年曰く、「靴さえ入ってないんだ」だったけど、ようやくに空の棺に何かの思いというか、いや、空なら空でそこに棺が存在し埋葬されているだけで十分なのだと時間がもたらした何かを迎え入れる余裕が出来たということか。
 うまく言えない。
 日本の311に対する日本人が、そういう境地へたどりつくには、これからどれほどの時間がかかることか……。
 争いと天災を同じ感情の地平線上で語り比べることは、多分きっと、いけないことなんだろうが。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

 私のようなものが見るべき映画であったのかどうか、それすら、実は疑問だ。
 話題になっていたので前売券を買って、でも家族は「見たくない」というので、一人ででかけたのだけれど、ストーリーの細部、特に重要な細部に個人的に納得できなくて、ラストの大団円もしずしずと進行したせいで、「まあ、こんなものかしらん」と思っただけで終わってしまった。
 あのが、あれほどに扱われてきたのに、最後にああいうものだとわかってしまったというのが、ちょっと肩すかしだったか。
 でも人生なんてものは、たいていにそんなものだ。さしたることなどありはしない、肉親の死以外には。
 だけども、肉親の死がいかほどに当人たちにとってつらかろうと、死者と死そのものはは共有できない、生者は生きるしかないんだから。

 それだけのほどのことへと、911から、ようやくたどりついたというのか。
 私にはそれしか言えない。
 少年には祖父と同じ「」をたどる権利(あるいは義務)もありえたし、いやしかし、その権利(あるいは義務)を行使しなかったことが救いなんだと思うたりもする。



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