2015年07月28日

モツの話

 今はもうむかし、東京に数年いた頃があって、その当時から金はないけど酒飲みであった私は、安居酒屋で夜を過ごすことが多かった。
 おでんが酒の肴であることを東京に行ったおかげで知った。さらに、東京では焼き鶏と称していても、部位によってはであることが多いに無きにしも非ずってことも、なぁんとなく人に教えてもらって知った(正直、どっちがどれで、どれがどっちか区別つけがたし程度の舌しか持ってなかったが……なにせ、酔っ払いのことですから)。

 そういう酒飲み生活の中で、モツ煮込みには非常にお世話になった。
 安居酒屋へ訪れたら、「とりあえず、モツ煮込みを人数分適当に。それからビールも」という言葉だけで、飲み会をはじめることができたもの。
 モツ煮込みは、たいていの店にあり、特に安さを売りにしているチェーン店なら必ずあって、誰しもが食っていた(ような気がする)。
 そうして、あのモツが豚なのか牛なのか、私はまったく気にもせず、したがって、今でもまったくわからない。だが、鶏では決しなかったことだけはわかった。

 さて、高松へ帰って幾星霜。
 「おでん屋で飲みたいな」と思っても、その酒飲み相手のおでん屋はなし(のちに見つけた。今でもあるか)。
 「モツ煮込みが食いたいな」と思っても、鶏のそれがあるやなしや状態。牛豚モツ煮込みはあるのかないのか? 答えは、「ない」(今は知らん)。

 しからば、「自分で豚モツの煮込み作っちゃおうか」と思うたら、そんなもん、「どこに売ってるの?」状態。
 需要のないところに供給もないですよね、当たり前。
 牛にしても焼肉ようならまだしも、煮込みにする用途のいわゆる白モツは……。
 だから、鶏モツの煮込みをたまに食っては我慢してるけど、鶏と牛豚とでは風味と言うか味わいが全く違う(鶏がまずいという意味ではない)。

 じゃあどうするか?
 私の愛読する檀一雄氏の『檀流クッキング』(中公文庫)には、モツ料理の買い出しに関して、こう記載があった。
 「(豚モツを買うなら)タンハツまでつながっているものを買いなさい。私はレバーまでつながっているのを買うが、素人には多すぎて扱いかねるだろう」とか。
 できんわ!
 どこで買えるかも知らんわ!

 こう考える時点で私は食通として失格である。
 スーパーの食肉売り場でなくて、街の食肉店に相談すればなんとかなるかもしれない。でも、手に入れても、手に余るに間違いない。
 で、あきらめた。

 そうして何年かに一度出向くモツ煮込み文化圏に思いをはせるのみだ。


 でも、これだけ、市内の飲み屋街に全国チェーンの居酒屋や、ホルモン系の店が増えた今、心配しないでも、プロの手で素敵に仕上がったモツ煮込みを食べられるかもしれない……と思いつつ、勇気のない私は、ここで「ぶつくさ」言うのみであった。嗚呼。


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